2020夏の振り返りその1。かけこみ亭のぼけまるさんのバースデイコンサート生前葬用に遺影イラストを描く。

9月も半ばを過ぎて、朝晩がようやく涼しくなってきましたね。
今年は8月~9月前半にいろいろお仕事が重なってとにかく駆け抜けまして、ようやくアトリエの荷物の片付けとか画像の整理とかができてきたので、ここらで3回に分けてサイトにまとめておきます。

まず一回目はぼけまるさんの生前葬の遺影を描かせていただいた話。

ぼけまるさんは、東京の国立市、谷保駅の近くで、食べのみスペース「かけこみ亭」を営むおじさん。名前のとおり、駆け込み寺のような、どんな人も受け入れるようなお店で、飲み屋さんであり、音響設備があって演奏もできたり、いろんな使われかたをしてる。

そのぼけさん、アコースティックギターを抱えてフォークソングを歌ってもいて、年に一度、誕生祝いも兼ねて、8月に自前のコンサートをひらいている。

そのコンサート、72歳になる今年は「生前葬」と銘打って盛大にやるので遺影イラストを描いてくれないかとの打診がきたのが6月。ステージ背景に飾りたいとのことでおよそ模造紙2枚ぶんの大きなサイズに描くことに。後から知ったけど、遺影の設営の担当で連絡窓口になってくれたマリオさんは美大卒で演劇の美術や小物を作るお仕事をしていたのだそうで、どうりで話が早い。ステージとかに飾るものって、家で見るのと比べて倍以上のサイズ感で作らないと、ひどくちっぽけに見えちゃうんだよね。

かけこみ亭は、僕が上京前富山の大学生だった頃からずっと参加している武蔵野はらっぱ祭りやそこの常連バンドたちとの縁も濃いお店で、上京してすぐにかけこみ亭にライブを見にいってそこでいろんな知り合いができた。当時、90センチ角のベニヤ板の周囲に瓶ビールの王冠をメダル状に伸ばして穴あけてくくりつけて、持って歩くと一歩一歩シャランシャラン音が鳴る絵というのを作って、それをプラカード代わりに、米国が911の報復でイラクにうやむやな理由で侵攻しそうだった(&日本は協力するのかどうかという空気)頃の反対を表明するデモに参加してて、その絵はずっとかけこみ亭の天井に飾ってくれてた。まだあったりするかなー。

「殺すまい」 2003年 90cm×90cm ベニヤ板 瓶の蓋   上京直前に富山で作った絵。20代前半は黒い線の絵ばっかりだったなー

そんなご縁もご恩もある、大尊敬するお店。ぼけさんは昼間にヘルパーの仕事をしつつ、儲け度外視でかけこみ亭の運営を続けてるのも聞いてたし、なにしろ遺影だし、予算が少なかろうがなんだろうがこれは応えねばならないぞと引き受ける。

狭小アトリエ部屋にはおさまらないサイズだったので、家族が寝た後にダイニングルームのテーブルなどをどかして制作開始!

遺影の絵を描くにあたり、当時かけこみ亭が週に二度やっていた生配信のアーカイブを幾つも見ました。配信動画ではぼけさんの昔話も出たりしてて、けっこうな昔に、男性が育児に参加しようという会のメンバーをしててあちこちで講演するのを手伝ってたとか、人に歴史ありだなーと思った。 その頃は日本でそんなことを訴える団体がほとんどなくて、電車乗っても子どもを抱っこしたりあやしている男性などいなかったって。

ぼけさんは、常連客とか気の合った人たちのところに子どもが生まれると、その子たちを「孫」と勝手に認定して可愛がる。その孫たちに囲まれるもっと昔の若い頃から、ぼけさんは子どもを大事にする活動に関わってたのだなー。なので、遺影イラストのぼけさんのまわりにはたくさんの子どもたちを描こうと決める。

描くにあたり、かけこみ亭のフェイスブックページでぼけさんの写真を大募集して、お客さんがいろいろ送ってくれた。ちなみにぼけさん自身はデジタルに疎い超アナログな人!

描きながら、なんで生前葬をするんだろうと想いを巡らした。描くにあたってぼけさんにはもちろん電話であれこれ質問してて、なんで生前葬なのかも聞いてるんだけど、なんかすごい覚悟とかがある感じじゃなくて、「面白いでしょ」みたいなノリを感じた。「生前葬って言ったら不謹慎だと怒られたりもしたけど、この歳になると、友人知人と葬式で再会することが多くて、でも生きてるうちに会ったほうがいいでしょ、生きてる時に会おうよ!」みたいな話を、生配信でも何度も話されてた。なので、ぼけさんが生前葬をすると決めたことに深い意味は案外無いのかもしれない。

だがしかし、せっかく写真じゃなく絵で遺影を作るのだから、なにかちょっと意味を持たせてみたい勝手な私。ぼけさんはたくさんの人と濃く関わってきて、ヘルパーもされてるし、見送った人の数も多いのだろうなと思って、背景に孫たちだけでなく亡くなった人も描き入れてみることに。生前葬をしたぼけさんはあっちとこっちの世界のあいだにいる人になるんだな。 絵の中で、額縁の外にまで飛んでいる金色のつぶつぶは、ぼけさんが何十年もばらまき続けてきた愛のつぶつぶです。距離を保たないと、その愛の飛沫に感染しちゃうぞ。そうやってぼけさんの愛が飛沫感染した人がたくさんいて、きっと各地で独自にその人なりの愛を振りまいているんだろうなと思います。 ありがとうございました。タイトルは遺影なので「イエーイ!」です。描きあがった時の説明動画がこちら ↓

当日は僕は行けず、家で子守りしつつ生配信を見たのですが、祭壇が立派でびっくり!手前の美しい花々(全部雑草で、虫やクモも紛れてる)とろうそくや線香は別の絵描きさんの絵です。素晴らしすぎる!

お花のおかげですごく引き立った。ありがたい。雑草と虫たちってのがまたいいなあ。

常連客の思い出トークがあったり、たくさんの演奏があったり、合間に寸劇が入ったり、ぼけまるさんあるあるの可笑しい紙芝居が入ったり、ビデオレターがあったり、電報が読まれたり、濃い内容でした。「死んでない音頭」っていう新曲が披露されてて最高だった。「しんでなーい しんでなーい」っていう掛け声のコールアンドレスポンス!

ぼけさんは最初に黒い衣装で出てきて歌を披露。この時は参列した人・あるいは喪主のイメージなんだと思う。その後に死装束に着替えて送られる死者として寸劇に何度も登場。

かけこみ亭に住んでいるネズミたち(中国のニセミッキーみたいな)による寸劇、可笑しかったなあ。黒いネズミ役がマリオさん。なんとネズミ帽子もズボンもマリオさんの手作りだそう!すんげー!

 

生前葬で大勢に見送られて一度死んだはずのぼけまるさんは、今でも元気にかけこみ亭を運営しています。お近くの方は是非のぞいてみては?

かけこみ亭フェイスブックページ

かけこみ亭サイト

 

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